一九九九年、モデルのクリスティ・プリングリーやマンハッタンのベテラン社交家のナン・ケンプナーら、社交界の花形やセレブたち一〇〇人以上が裁判所に呼び出される騒ぎがあった。一九九四年にチャリティ行事でシャトゥーシュのショールを買ったことについて、大陪審の前で証言するためである。シャトゥーシュは、チルーと呼ばれるチベットレイヨウの毛皮を使って織られるデリケートな巻き物で、アメリカでは一九七九年に持ち込みが禁止されていた。二〇世紀初頭には数百万頭いたチルーが一〇万頭未満まで激減したためである。しかも、一九九〇年代には、その数はたった六万五〇〇〇頭になっていた。社交界の花形たちは、自分たちも被害者だと主張した。言い伝えでは、ヒマラヤに住む部族民がこの野生のヤギの抜け毛を集めてこうしたショールを織るということになっている。「私は、岩場の流木に引っかかった毛を拾い集めて作るという話を信じていたの。実はこの動物の大量虐殺が行われていることがわかったのは、それから間もなくのことだったわ」。ケンプナーは、『ニューヨーク』誌にそう釈明した。ヤギの毛を剃ってできるカシミアと違って、シャトゥーシュの原料となるチルーのアンダーコートは皮を剥いでからでないと取り出せないため、ショール一枚につき、三〜五頭が撃たれて皮を剥がれている。だが、信じたいことを信じ込ませてしまうところが、ファッションの怖さである。レザーは毛皮よりも頻繁に使われているのに、それほど不興を買わないものである。どっちみち食用に飼育されて殺される畜牛の副産物だからだ。